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狂人のたわごと

東京一極集中と預金残高

 以前から何度も書いていることだが、現在一都三県に日本の預金残高の45%が集中している。ただし悪い意味で笑えるのだが、一都三県に群馬、栃木、茨城の三県を加えた関東全域の預金残高占有率は49%である。一都三県で45%を越えていて、尚且つ関東全域で50%を越えないのは、残り三県の貯蓄額が、首都圏以外の地域とそれほど大きな違いがないためだ。

*資金の偏在と地方の衰退*
 当たり前だが一都三県で50%近い資金を占有している以上、残りの地域全てで残りの50%を分け合う形になる。こうなると残りの地域の預金量は少なくなってしまうのだが、この際も都市部に資金が集中するため、その資金の偏在ぶりはずいぶん異常なことになっている。

*ブッシュ改革と小泉改革*
 この傾向が強まった理由は二つあり、一つはアメリカの金融ビッグバンであり、もう一つは小泉改革だ。実のところ現在の預金残高に郵便貯金は入っていない。郵便貯金は比較的全国にばらまかれていたのだが、郵政民営化で現在は猛烈な勢いで東京に集中し始めている。もちろんこれ自体は別に不思議ではない。誰でも知っている通り金融業の決済は基本的に東京に集中している。東京の強壮ぶりを自助努力のたまものと思う人もいるだろうが、自助努力とは無関係にシステム自体が東京を中心に作られているのだ。

*外為と東京*
 たとえば外為取引はほぼ100%が東京を通るようになっている。福岡でも外為決済はできるが、取引そのものは東京市場でしかできないようになっている。つまり福岡で出した注文は東京に送られ、実際の取引は東京市場で行われる。
 かつては外為取引そのものを国家が管理していたため、基本的には東京市場を使わないと外為取引は出来ないようになっている。もちろん現在ならロンドンやニューヨークでも外為取引はできるが、取引をするためには口座を開く必要がある。その手続きは東京を通してやるし、仮に海外に口座を開いてしまえば、福岡から注文を出してもお金そのものは福岡では動かなくなってしまう。
 つまりお釈迦様の掌の上の孫悟空ではないが、東京を無視して外為取引を行うことはできず、東京を通さない時も、地元の市場で取引が出来るわけではない。しかも海外で口座を開設する際には東京市場を通すしかなく、結局のところ外為は全て東京を通ることになっている。

*ネットワーク独裁*
 ちなみに証券市場は東証の独占が確立している。かつては大商も頑張っていたが、現在は東証に吸収されてしまっており、証券市場はほぼ完全に独占が成立している。さらに債券市場も東京が独占状態で、特に外為絡みの投資は東京しか通らないため、自助努力で地方が頑張ろうとしても、実際には頑張れば頑張るほど利益は東京に流れ込んでいく。
 しかもやっかいなのは資金決済も東京に集中している。日銀が中心になって作っている日銀ネットは、当たり前だが東京の日銀が中心になって決済の円滑化を行っている。それ以外の巨大なネットワークも東京に置かれているため、田舎の銀行同士の決済でさえ東京のコンピュータを使って行う体勢になっている。

*自然に集まる資金*
 したがって金融業の資金の多くが東京に集中しているのは、別に東京の自助努力によって達成された訳ではない。元々市場の仕組みそのものが東京に集中しており、外為や証券市場などは東京にしかシステムが存在しない状況になっている。さらに日銀ネットの場合は全国の取引を円滑化するために、一つの市場で全ての取引が行えるようにしてある。この一つの市場が東京を中心に作られている以上、当たり前だが全てのお金は東京中心でしか流通しない。つまり取引そのものを田舎で行っていても、資金のやりとりは東京で行われてしまっているのだ。

*きらびやかさと歪み*
 こうなると当たり前だが資金は今後とも東京に集まってくる。どのみち決済を東京でやるのなら、東京に資金を置いておいた方が効率が良くなる。しかも小泉改革で東京から地方への金の流れを止めてしまっている。この結果東京に流れ込む金は全て東京に滞留し、特に外為絡みになるとわざわざ地方に移転させる必要がない。
 こうなると自助努力など関係なく、寝ていても東京にお金が集まることになる。しかもこれに関して東京の金融関係者やマスコミは全く悩んでいない。基本的には自分達の手元にお金が流れ込んでくるため、下手にケチをつけてお金の流れを止めたくない。その上で自助努力を謳えば何だか自分だけが努力しているみたいで気分もいい。
 だが厄介なのは経済大国のお金を全て東京に集めると、当たり前だが東京に歪みが出てくる。お金が集まりすぎる歪みはお金がなさすぎる歪みよりは遥かにマシだが、それでも何の問題も出ないということはありえない。

*バブルはまだか*
 現在は評判の良いマンションの価格が一般市民に購入不可能な値段に上昇するといった程度の問題しか進んでいない。何でこれがこの程度なのかといえば、海外からの投資資金が集中したバンクーバーでは、一戸建ての平均価格が一億円を越えてしまっている。
 今のところ東京市場は国内の資金で押し上げられており、国内資金の一部は海外市場に流出している。長年のデフレ不況の影響で海外からの投資資金が流れ込みにくいためだが、世界市場がおかしくなると、さすがに下落しない市場は注目を集め始める。経済大国の資金を半分飲み込んでいる東京はその意味では比較的上昇しやすい市場だ。となると海外からの資金が流れ込む可能性があり、その際にバブルが生じる危険性は非常に高い。今までは国内から海外への資金の流れだったのでそうならなかっただけで、仮に海外から資金が流れ込むようになると、さすがに東京への資金集中が問題になってくる。

*効率化と一人勝ち*
 もちろん効率という意味では今後ともに東京に資金を集中させる方がいいし、マスコミも東京が金持ちでいることに大賛成だ。何しろテレビ業界では大阪と東京のギャラは一桁以上違うと言われている。ちなみに関西二府四県の預金占有率は約15%で、この数字は埼玉、神奈川、千葉三県の合計とほぼ同じだ。ちなみに人口もほぼ同じで、東京から見た大阪は距離の離れた神奈川県と変わらなくなってしまっている。むしろ人口では横浜市が大阪市をはるかに越えているので、効率では横浜の方が大阪より上だ。

*東京都民はそれほど金持ちではない*
 ただ我が世の春も今しばらくで、今後は東京市場の資金の集中が問題になり始めるはずだ。既に一都三県の預金占有率が45%を超えており、関東全域で50%を越えるのは時間の問題だ。それどころか今の勢いで行くと、一都三県で50%を越える可能性がある。こうなるとさすがの知識人やマスコミもこれを無視出来なくなる。
 ちなみに東京に資金が集中するのは東京都民が地方の市民に比べて余りにも優秀すぎるからではない。金融システムが東京に集中しているから資金集中が起きているのだが、東京都民一人当たりの預金残高は全国平均の1.5倍しかない。1.5倍で何が悪いと思うだろうが、東京の預金占有率は30%であり人口は10%超。個人の預金残高が全国の3倍にならない理由は企業や団体の資金が東京に集中しているためだ。
 しかも神奈川、埼玉、千葉などは全国平均よりも個人の貯蓄残高は低い。これは若い人が多いという事情もあるが、生活資金が高く付くため、貯蓄がしにくいといった事情もある。そして80年代のバブルの時代には、上昇する地価の影響で所得の低い層は徐々に東京から外へ向かって押し出される傾向があった。この傾向は今後バブルが膨らむともう一度出てくるはずで、そうなると東京の知識人やマスコミも資金の集中を喜んでいるわけにはいかなくなる。

*潮の変わり目*
 既に国土の平均的な発展を画策して「日本列島改造論」を著した田中角栄氏を石原元都知事が持ち上げ始めている。さらにブッシュ改革の日本版で資金の東京集中を加速した小泉氏の人気は明らかに下落している。何よりも資金集中で東京にバブルが発生すると、東京都民自体の生活が随分不便になってくる。
 現在東京オリンピックやリニアモーターカー、羽田の国際化や湾岸開発、品川の再開発など東京には巨大プロジェクトが目白押しだ。かつては不動産バブルは地価が高い日本の固有現象だという説もあったが、ドバイやアイスランドでもバブルイコール不動産開発である。となると巨大開発がいくつも存在し、資金が集中している東京ほどバブル経済に最適の環境はなく、これが現実に膨らみ始めると、東京のマスコミや知識人も資金の地方移転を叫ばざるを得なくなる。
 彼らは今のところまだそれについては発言していないが、最近になって時々資金集中の話題を目にするようになった。今後バブルが膨らんでいくとこの声は強くなるだろうし、石原元都知事が田中角栄氏を褒めちぎっている以上、世論そのものが集中しすぎた資金を疑問視し始めるのは時間の問題だろう。

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